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執筆者の写真服部博明

臨床検査技師100人カイギ総まとめ会 感想 そして服部の考えたこと

更新日:2023年12月22日



臨床検査技師100人カイギ
臨床検査技師100人カイギチラシ

みなさん、こんにちは。鳥取県の臨床検査技師 服部博明です。

2023年9月24日、全20回開催された臨床検査技師100人カイギを総括する総まとめ会が開催されました。

神戸先生の講演、運営による振り返り、出席数の多かった参加者による振り返り、意見交換ととても充実したものでした。

神戸先生の講演では農村型コミュニティと都市型コミュニティの違い、これからの課題、医療のミッション、実は医療はすでにコミュニティに組み込まれていることなど学びが多い内容で、ぜひ、アーカイブなどでチェックしてほしい内容です。


ここからは服部にとっての100人カイギとは何だったのか、今の臨床検査技師について思うこと、これからの臨床検査技師についてをせっかくの機会なのでまとめてみようと思います。


〇服部にとっての臨床検査技師100人カイギとは

私にとっては0を1にする場だったのではないかと思います。

まず人との出会い。まったく関係性のない(0)の状態から同じオンラインの場に集って意見交換をして(1)を作り出す。これはとても大きいことです。

例えば学会や研修会などに参加してもまったく関係性のないたくさんの人とすれ違いますが突然話しかけるなんてこともなく、発表を聞いていてもその先生と言葉を交わすなんてことはとてもハードルが高いです。本来、意見交換の場でもある学会でもそうなのです。しかし、この100人カイギでは学術ではなく「想い」の焦点をあてて、意見交換の場をオンラインで設けたことにより言葉を交わす機会を得ることができました。この状態ならば学会などの集いで出会ったときにすでに関係性(1)ができているので話しかけるハードルが下がります。するとその人の関係者の人ともつながりが生まれ、2や3になっていく…そんな貴重な場だったと思います。

次に全く知らない(0)を聞いたことある(1)にしてくれる場だったと思います。登壇者は様々な想いをもって生きてきて、それを共有してくれました。自分の知らない分野、知らない生き方、知らない物語をたくさん知ることができました。どうしても人間は視野に限界があります。その限界は自分でどんどん狭めていって自分の携わってる分野がすべて、その分野こそが大事だと思い込んでいくように思います。そんな視野を広げるきっかけをくれる、そんな場だったと思います。


今の臨床検査技師について思うこと

あくまで服部のみてきた中での一意見として読んでもらえたら幸いです。


・気づかないうちに視野狭窄している

先述した視野の狭まり方がとても大きな問題だと感じてます。一番問題視したいのが「自分のやっている分野こそすべて、その分野が一番大事」という視野狭窄です。

実例として 検体検査と生理検査の仲の悪さ が挙げられます。

あくまで私が今まで抱いた印象ですのでこの感じ方こそ視野が狭い可能性があることはご留意ください。

検体検査に従事している人は多くの検体を処理します。座る暇もないほど検体を機械にかけてはデータをチェックし、再検するかの判断や特殊検体がきたときの処置、試薬残量の確認をしながら機器のメンテナンスをしたり、ずっと座りっぱなしで顕微鏡をのぞき、休む間もなく検査するといった苦労があります。その視点からみると生理検査は「患者がいなければ大きな仕事はない」ようにみえ、座って談笑していたり、のんびりしていたりするのが目に入るとさぼっている!楽そう!といった思いを抱きます。

生理検査に従事している人は「対人」の検査ですので、患者さんがいる間は気が抜けません。ピークの時間帯には検査がどうしてもブッキングしてしまい人手が足りなくなったり、予約検査の時間に間に合わせるために時間調整しながら検査したりします。また検体検査と異なり、機械が検査するわけではないエコー検査などは特に検査者の技量に大きく結果が依存するのですが、迷ったときに気軽に相談できる環境でもありません。不慣れな臨床検査技師が先輩に相談しようとしても患者さんの目があり、その相談している光景をみせると不安を助長することになります。また、座って談笑しているようにみえてそれこそがレポートの相談だったり、これからの予約検査のことだったり、検査技術の意見交換だったりします。その視点から検体検査をみると、患者相手じゃないからストレスがかからなさそう、機械にかけるだけじゃないか、だれでもできるといった思いを抱きます。


実際はそれぞれの苦労があって、それぞれ力を抜ける部分がある。それだけのことだと思います。どっちが上でどっちが下、どっちが楽でどっちが大変というものでもありません。

また、いがみ合っていなかったとしても、他人事という意識も厄介です。私は検体検査だから生理検査の問題は生理検査でなんとかしてね?といった意識。どこかにないでしょうか。逆もまた然り。同じ「検査部」に配属されている同じ「臨床検査技師」なのですからお互いがお互いを敬ってサポートしあう。それがチームではないでしょうか。

と私は思いながら総合病院に勤務していたことがあります。


視野狭窄は若年の技師なら仕方ないかなと思うところもありますが、実のところわりとベテランだったり、管理職だったりが陥っていて、いがみあっていることがあります。これが次の問題につながります。


・臨床検査技師の管理職はマネジメントや組織運営の素人

私たち臨床検査技師は「検査」のプロであって、マネジメントなどをしっかり学んできていません。学んでいたとしても自主学習であったり、病院の用意したちょっとしたカリキュラムであったりで十分でないことが多いです。

そんな中で先述の視野狭窄に陥ったままの技師が管理職となると、自分の経験豊富な分野ならばうまく采配できるけれども、そうでない分野のことはわからないから丸投げだったり、まったく現場に即していない命令だったりをしてしまう場合があります。

マネジメントに長けたものであれば、技師長、副技師長や主任などの同じ管理職の立場の人間と協力しながら足りないところを補うのだと思いますが、わりと独裁的な人を目にすることがありました。

任せたら任せっぱなしで自分に相談されても知りませんといった管理職もいれば、それぞれの検査特性や事情を考慮しない管理職、自分の部門じゃないからとその部門のルールをきたばかりの新人に聞いて自分は知らないけどなんで?と叱責する管理職。

そんな状況で部下たちがお互いを尊重しながら検査室を運営できるでしょうか?また、積極的に学び、検査室の外に出て、地域医療に貢献していこうという取り組みができるでしょうか?どちらかというと現状維持、今までやってきたことをやればいい、言われたことだけやればいいとなりましませんでしょうか?

なかには尊敬できる管理職の方もいました。自身の部門のことだけじゃなく他の部門の声にも耳を傾け、決して一方的にはならずに相談や議論をしたうえで決めていく。どうしたらそう在れるのかを考えていく必要があると感じます。


もちろん、管理職の苦労もとても大きいものがあると思います。負担は増えるのに残業はつかない病院の労働システムや部下からは苦情、病院の経営陣からの様々な要求、板挟み状態です。雑務もとても多くなり、人事のことも考えなければなりません。

それなのに日常業務は免除されない。免除しようにも人手が足りないし、部下はそんなことを気にしてはくれない。

正直なところ管理職になるメリットというものが薄いにも関わらずならざるを得ないからなったという人も多いと思います。そうなると自主的にマネジメントを学び…といったマインドを持つ人はレアなケースになってきましょう。

今は医療部門管理資格という日臨技がだしているカリキュラムと資格があります。学ぶ場は提供されているのですが、千葉科学大学に入学することになる分、金銭的負担は大きいです。それを負担してまで管理職として病院に貢献する余裕があるか。それも大きな問題に感じます。

現在の日本がそもそも不況であり、社会保障料や税金がのしかかり、例え所得がふえてもその分ひかれて現状維持ばかり、病院は非営利組織であり、俸給がしっかりと決まっていてそう簡単に給与はあがらない、頑張ったところで金銭的に楽にならない、評価もそんなにされない、そういった日本の社会情勢や病院という立ち位置も複雑に絡む問題であり、なかなか一筋縄でこの管理職問題を解決することは難しいと感じています。


・都市部、地方の臨床検査技師の意識や環境の格差

色々な差がありますが、今回は自己研鑽に使う時間の格差をとりあげたいと思います。

私は一度大阪の病院に研修に行くようにと指示があり1週間ほど研修したことがあります。

大阪では業務後いわゆるアフター5にあたる時間に各地でセミナーが開かれており、交通網が非常に発達しているため、今日の帰りはこのセミナーにちょっと顔出して帰ろうかな~といった感じで気軽にセミナーに参加できる環境でした。そのためか仕事の後にちょっと学ぶという意識も持ちやすいのではないかとかんがえられました。

一方で私のホームである山陰(島根・鳥取)ではセミナー数が少ない上に、臨床検査技師向けというよりは医師向けの治療の話のものが多く、それも未熟な交通網のため自身の車を走らせて行かねばならず、気軽に寄れるような場所ではありません。また技師向けは土日開催が多いのですが、県の西部、中央部、東部もちまわりで自分の所在地に近いときならまだ参加しようかなとなっても離れると往復何時間もかけて車移動してまで行くかと言われると…という感じです。ゆえに業務外の時間でセミナーに参加しようといった意識は芽生えにくく学ぶなら参考書とかで好きな時にといった意識が強いように思います。

私もオンラインセミナー開催していますが、山陰からの参加率はとても低く、首都圏からの参加が多いのもこういったそもそもの環境による意識の違いもありそうだと思います。


とこの問題に関しては9月24日の総まとめ会に参加するまで環境の違いの意識差だと考えていましたが、他にも問題がありそうだと気づきました。

それは100人カイギに参加していた人たちはある意味で精力的な層であり、臨床検査技師全体でみたときにとても少数派なのではないかという視点です。

ほとんどの人たちは淡々と業務をこなすことが重要であり、他の時間は別のことに使いたい、私生活を大事にしたいという層に属するのではないか。

そう考えると人口の多い都市部からオンラインセミナーなどに参加する人が多く、人口が少ない地方からは少ないのはそのまま、割合的なものが関与していて環境差だけでなくそもそもの人口差も大きいのかもしれないと思いいたりました。

しかしマジョリティの在り方を変えななければこれからの医療に臨床検査技師が取り残されてしまう可能性はあると私は考えます。


〇これからの臨床検査技師

100人カイギでは強かったり熱かったり、そんな「想い」をもつ登壇者の方の人生をみさせてもらいました。しかし先述したようにマジョリティはそこまで行動するにはハードルが高いと感じている方が多いのではないでしょうか?

きっとこれからの臨床検査技師はより多様化すると思います。

①新たな分野で活躍する人

②地域医療に関わっていく人(検査室をでて地域で働く)

③病院経営に携わっていく人

④従来の働き方をする人

・・・もっと様々な人がいるでしょう。


どうしても強い個性を目の当たりにして活躍する姿をみると、従来の働き方の否定を感じる方もいると思います。しかし、私のような少し変わった働き方ができるのは従来の医療を支えている臨床検査技師が検査室というフィールドでがんばっているからでもあります。

みんながみんな私みたいにしていたら医療は成り立ちません。

しかし、現在の病院経営は昭和のモデルからさしてかわっていないようにも感じます。あとづけで取り入れたビジネスの世界の制度(人事評価)などは努力や頑張りが報酬に直結しない医療に対してはあまり効果的に運用されている印象ではなく、結局は業務負担が増えているだけのようにも思います。

だれかが変えていかなければならない。

ゆえに私みたいな働き方があることを発信していく必要があります。

そしてそれを従来型の働き方の検査室と連携していくところまでもっていければ少しは何かかわるかもしれません。


親しい医師からナシーム・ニコラス・タレブの本「身銭を切れ」を奨めてもらって読んでいます。その名の通り、見返りや資本主義的な考えでなく、身銭を切ることの重要性が書かれていますが、これは金銭的なものだけでなく、自身がリスクを負うことの重要性でもあります。これがとても大変なことです。だれしもリスクは避けたい、それが人間というものです。しかし、リスクなく成果だけ要求すれば人は離れていきます。

物語でよく 勇者 が尊敬されるのは魔王討伐という人類にとって急務であっても、死の可能性が高い大きなリスクを負っているためです。

アンパンマンがヒーローなのも、前線でたたかうだけでなく自分が弱るのも顧みず自身の頭をひもじい想いをしている人に差し出すからです。


昨今は医師の働き方改革も大きな話題です。来年には本格的に始動します。

しかし、先日、過労や病院の在り方を原因として若き医師がその命を失う事件がありました。国が何か制度を変えてもそれはマクロのことであって、ミクロのことはみえていないしそれに対応すべく改革を行う経営陣が必ずしも末端の労働者を守ってくれるわけではないのかもしれません。かえって制度にあわせるためにしんどい思いを現場がすることになる、そんな光景が想像できます。

労働組合が機能していないことの多い医療職だからこそ、自身を守りつつ医療を守っていく必要があるのだと思います。

身銭を切ろうにも、自身が満身創痍では切れるものも切れません。

現状に甘んじていてはだれにとっても良い未来は訪れないと思います。

これからの臨床検査技師はどんな働き方をするにしても、これからのこと、自分はどう生きていくのか考えていく必要があり、100人カイギはそのきっかけのひとつとなったのではないかと思います。


とても長々と、しかもとりとめのない文章となってしまいました。

ここまで読んでくださった方がいらっしゃたら感謝いたします。

ぜひあなたの想いをこの投稿のコメント欄に残してもらえたら嬉しいです。




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